税負担、最適化の余地はありませんか?
会社経営において、事業の成長とともに避けて通れないのが「税金」の問題です。粗利が1億円、5億円、そして10億円と拡大していく中で、納税額の大きさを実感される経営者の方は少なくないでしょう。「利益は出ているはずなのに、想定より手元にお金が残らない…」「この税負担は、果たして適正なのだろうか?」――こうした思いを抱くことがあるかもしれません。
多くの経営者の方は、顧問税理士に税務を依頼されています。専門家によるサポートは事業運営に不可欠です。しかし、ここで一度立ち止まって、客観的な視点を持つことも大切です。「自社の状況に合わせた“最善の”税務戦略が、常に取られているだろうか?」と。
税理士の経験や専門分野、得意とする領域によって、提案される内容や節税に対するアプローチが異なる場合はあります。特に、粗利が1億〜10億円規模に達した成長企業においては、事業構造が複雑化し、考慮すべき税務リスクも増えます。そのため、過去の数字を集計して申告書を作成するだけでなく、将来を見据え、会社の成長ステージに合わせた、戦略的な節税計画の重要性が増してきます。
もし、見直し依頼をしても、税理士事務所からの返答や提案が少なく、現状の税務戦略を見直す機会が少ない場合、本来であれば活用できたはずの節税策や優遇税制を見直す機会を逸している可能性も考えられます。その結果として、税負担を最適化できる余地が残っているとしたら、それは会社にとって憂慮すべき点かもしれません。
この記事では、経営者として基本的な知識として押さえておきたい「法人税」「消費税」、そして役員報酬などに関わる「所得税」について、見直しのポイントを解説します。この記事が、「自社の税務対策は現状で最適か?」を考えるきっかけとなり、より良い税務戦略の構築、ひいては会社の持続的な成長につなげるためのヒントとなれば幸いです。
法人税の見直しポイント:「会社の利益」をどう守り、最適化するか
法人税は、会社の利益(所得)に対して課される税金です。法人税負担を適正化するための基本的な考え方は、「課税対象となる所得をいかに合法的に圧縮するか」という点にあります。
【基本】法人税計算のシンプルな構造
法人税の計算プロセスは複雑ですが、基本的な構造を理解しておくことは、税務戦略を考える上で役立ちます。
売上高
- 売上原価
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= 売上総利益(粗利)
- 販売費及び一般管理費(販管費)
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= 営業利益
+ 営業外収益
- 営業外費用
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= 経常利益
+ 特別利益
- 特別損失
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= 税引前当期純利益
+ 加算項目(損金不算入など)
- 減算項目(損金算入など)
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= 課税所得
× 法人税率
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= 法人税額
- 税額控除
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= 納付すべき法人税額
この計算構造から、法人税を適正化するアプローチは主に以下の3つが考えられます。
- 損金(費用)を漏れなく、かつ適切に計上する
- 益金(収益)を適切なタイミングで認識する
- 課税所得や税額を直接減らす特例(税額控除など)を最大限活用する
これらを踏まえ、具体的な見直しポイントを見ていきましょう。
【Point 1】役員報酬の決定プロセスと適正額
役員報酬は、経営者自身の収入であると同時に、法人税計算上の主要な損金項目です。その決定プロセスと金額の妥当性は、税務上非常に重要視されます。
役員報酬を損金にするための3つのルール
損金算入が認められる役員報酬は、原則として以下のいずれかに該当する必要があります。
| 種類 | 概要 | ポイント・注意点 |
| 定期同額給与 | 毎月決まった時期に、決まった金額を支給する給与 | 原則、事業年度開始から3ヶ月以内に改定が必要。期中の安易な変更は損金不算入リスク。最も一般的な方法。 |
| 事前確定届出給与 | 事前に税務署へ届け出た時期・金額通りに支給する給与(賞与に近い) | 届出期限(株主総会から1ヶ月以内等)の遵守が必須。届け出内容と実際の支給が異なると全額損金不算入となる。 |
| 業績連動給与 | 会社の業績指標に連動して支給額が算定される給与(利益連動給与など) | 適用要件が複雑(非同族会社等)。算定方法の客観性・透明性が求められる。中小企業での適用は限定的。 |
役員報酬決定における留意点
- 期中変更のリスク: 定期同額給与の場合、原則として期中の増減額は損金として認められません。
- 過大役員報酬: 同業他社や類似規模の企業の役員報酬水準、職務内容、会社の収益状況などから見て不相当に高額な部分は、損金不算入とされる可能性があります。
- 法人・個人のトータル税負担: 役員報酬は個人の所得税・住民税・社会保険料にも影響します。法人税と個人の税負担を総合的にシミュレーションし、最適なバランスを見つけることが重要です。
役員報酬の決定にあたっては、税務上のルールを遵守するとともに、法人と個人のトータルでの税負担を考慮した戦略的な視点が求められます。経験豊富な税理士は、会社の利益計画や税制動向を踏まえたシミュレーションを行い、最適な役員報酬プランの策定をサポートできます。
【Point 2】計上可能な「損金」の検討と適切な処理
日々の経費処理において、損金算入できる費用を漏れなく計上することは、法人税の適正化に直結します。計上漏れや誤った処理がないか、定期的に見直すことが有効です。
見直したい損金項目例
- 福利厚生費: 従業員の満足度向上にもつながる社宅、食事補助、社員旅行、慶弔見舞金などは、税法上の要件を満たせば損金算入が可能です。
- 出張手当(日当): 適正な旅費規程に基づき支給される日当は、所得税も非課税となり、法人でも損金算入できます。
- 修繕費 vs 資本的支出: 固定資産の修理・改良費用の区分は重要です。現状維持のための支出は「修繕費」(損金)、価値を高める支出は「資本的支出」(資産計上→減価償却)となり、税務調査でも注目される点です。専門的な判断が求められます。
- 貸倒損失・評価損: 回収不能債権や著しく価値が低下した資産について、税法上の要件を満たせば損失計上が可能です。
- 少額減価償却資産の特例: 取得価額に応じた有利な償却方法(10万円未満:即時損金、20万円未満:一括償却、30万円未満:中小企業の特例)を適切に選択・適用できているか確認します。
減価償却方法の選択肢
固定資産の種類に応じて、償却方法(定額法・定率法など)を選択できます。
| 方法 | 特徴 | メリット | デメリット |
| 定額法 | 毎年、同じ金額を償却する | 毎年の費用が安定し、計画が立てやすい。 | 投資初期の節税効果は小さい。 |
| 定率法 | 償却初期に多くの金額を償却し、徐々に減少する | 投資初期の節税効果が高い。 | 後半の償却額が少なくなる。利益変動が大きい場合に不向き。 |
会社の利益状況や設備投資計画に応じて、より有利な償却方法を選択することが、キャッシュフロー改善につながる場合があります。税理士によるシミュレーションが有効です。
計画的な決算対策
決算日直前だけでなく、期中から計画的に損金を計上することも有効な手段です。
- 決算賞与: 一定の要件を満たせば、未払であっても当期の損金に算入できます。
- 未払費用の計上: 当期に発生した費用で未払いのもの(社会保険料、未払残業代など)を正確に計上します。
- 短期前払費用: 一定の要件を満たす場合、翌期以降の費用(家賃、保険料など)の前払い分を当期の損金にできる場合があります。
損金計上の可否判断や適切な処理には、専門的な知識が必要です。日頃から税理士とコミュニケーションを取り、疑問点を解消しておくことが望ましいでしょう。
【Point 3】活用可能な「税額控除」「特別税制」の検討
税額控除は、算出された法人税額から直接差し引くことができるため、節税効果が非常に高い制度です。しかし、適用要件が複雑であったり、毎年のように見直しが行われたりするため、情報収集と的確な判断が不可欠です。
主な税額控除・特別税制(例)
- 中小企業投資促進税制/中小企業経営強化税制: 特定の設備投資に対する特別償却または税額控除。
- 賃上げ促進税制: 従業員の給与引き上げ額に応じた税額控除。
- 研究開発税制: 試験研究費の額に応じた税額控除。
- 地域未来投資促進税制: 地域の特性を活かした事業投資への税制優遇。
これらの制度を最大限活用するには、自社の事業活動が適用対象となるかを正確に把握し、申告時に適切な手続きを行う必要があります。
《視点の違いによる発見例》
「以前の担当の方とは異なる視点で決算内容を確認したところ、クライアント様が行った設備投資が、中小企業投資促進税制の対象となることが判明したケースがありました。結果として、適用により数百万円単位の税額控除が実現し、キャッシュフロー改善に大きく貢献できたことがあります。顧問税理士事務所にお願いしていても、別の事務所にセカンドオピニオンを依頼するなどすることで、こうした視点を得ることができます。」
最新の税制改正に精通し、顧客企業の状況に合わせて積極的に制度活用を提案できる税理士事務所の存在は、企業にとって大きなメリットとなり得ます。
消費税の見直しポイント:「預かった消費税」を適正に納税するために
消費税は、売上時に預かった消費税から、仕入時に支払った消費税を差し引いて納付する税金です。2023年10月から始まったインボイス制度により、特に仕入税額控除のルールが変更され、多くの事業者にとって正確な対応が求められています。
【基本】インボイス制度への対応状況の確認
- 適格請求書発行事業者としての対応: 登録申請、請求書等への登録番号記載は適切か?
- 受領インボイスの確認・保存: 仕入税額控除の要件を満たすインボイスを適切に受領・保存できているか? 電子帳簿保存法への対応は?
- 経理処理: 会計ソフトの設定や経理フローはインボイス制度に対応済みか?
インボイス制度への適切な対応は、消費税の納税額に直接影響します。不明な点があれば、税理士に確認することが重要です。
【Point 1】課税事業者/免税事業者の判定・選択(主に設立時など)
基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の場合、原則として免税事業者となりますが、インボイス発行事業者となるためには課税事業者を選択する必要があります。また、特定期間の判定など、課税事業者となる要件は複数あります。設立時や事業内容の変更時には、適切な判定と届出が必要です。
【Point 2】簡易課税制度の適用と見直し
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、計算を簡略化できる「簡易課税制度」を選択できます。
| 事業区分 | みなし仕入率 |
| 第一種事業(卸売業) | 90% |
| 第二種事業(小売業) | 80% |
| 第三種事業(製造業等) | 70% |
| 第四種事業(その他) | 60% |
| 第五種事業(サービス業等) | 50% |
| 第六種事業(不動産業) | 40% |
留意点
- 有利不利の判定: 実際の課税仕入率とみなし仕入率を比較し、有利な方を選択します。設備投資計画なども考慮に入れる必要があります。
- 業種区分の正確性: 複数の事業を行う場合は、正確な区分と按分計算が求められます。
- 事前の届出と変更制限: 適用には事前の届出が必要で、原則2年間は変更できません。
事業内容や仕入構造が変わった場合など、定期的に簡易課税制度の適用の有利不利を見直すことが推奨されます。税理士によるシミュレーションが有効です。
【Point 3】仕入税額控除の計上漏れ・誤りのチェック
原則課税を採用している場合、支払った消費税を正確に把握し、控除を適用することが納税額の適正化につながります。
- インボイスの保存と帳簿記載: 仕入税額控除の基本要件です。
- 控除対象外取引の認識: 給与、土地代、保険料など、控除対象外となる取引を正確に把握する必要があります。
- 課税売上割合による調整: 非課税売上が多い場合などは、仕入税額控除額の調整計算が必要です。
- 従業員の経費精算: 立替経費についてもインボイスの保存が必要です。
- 海外取引: 輸出免税や国際取引に関する消費税の取り扱いは複雑なため、専門家の確認が推奨されます。
日々の経理処理において、仕入税額控除の要件を確認し、正確な処理を徹底することが重要です。
所得税(役員関連)の見直しポイント:「個人の手取り」をどう増やすか
法人税の最適化と同時に、経営者個人の所得税や住民税、社会保険料負担も考慮したトータルでのプランニングが求められます。
【Point 1】役員報酬と配当のバランス
会社の利益を個人に移転する方法として、役員報酬と配当があります。それぞれの税・社会保険料負担は異なるため、法人と個人の状況に合わせて最適なバランスを検討します。
- 役員報酬: 法人の損金になるが、個人の給与所得(累進課税)+社会保険料負担。
- 配当: 法人の損金にならないが、個人の配当所得(総合課税or分離課税、配当控除あり)+社会保険料対象外。
一般的には、所得水準や会社の利益状況によって有利不利が変わるため、税理士によるシミュレーションに基づいた判断が有効です。
【Point 2】役員退職金の活用と計画的な準備
役員退職金は、退職所得控除や分離課税により、税制面で非常に優遇されています。
- メリット: 大幅な税負担軽減、法人での損金算入(適正額)。
- 留意点: 適正額の算定、退職時までの計画的な財源確保(生命保険活用など)が不可欠。
将来の引退を見据え、早期から事業承継計画と合わせて退職金プランを検討し、準備を進めることが重要です。
【Point 3】福利厚生制度による実質手取り向上
税法上認められている福利厚生制度を活用することで、従業員満足度を高めつつ、実質的な手取り額を増やす効果が期待できます。
- 例: 社宅制度、通勤手当(非課税枠内)、出張手当(日当)、食事補助(要件あり)、慶弔見舞金など。
導入にあたっては、税務上の要件を正確に理解し、適切な運用を行う必要があります。
【Point 4】経営者個人ができる節税策
経営者自身の税負担軽減策も検討の価値があります。
- iDeCo、NISA: 税制優遇のある資産形成制度。
- ふるさと納税: 実質負担少なく返礼品を受けられる制度。
- 各種所得控除: 生命保険料控除、医療費控除などを漏れなく適用。
会社と個人の両面から税負担を最適化する視点が大切です。
税理士によって提案内容が異なる理由とパートナー選びの重要性
ここまで見てきたように、税負担を適正化するには多くの検討ポイントがあります。そして、これらのポイントに対してどのようなアプローチを取り、どれだけ効果的な提案ができるかは、顧問税理士の専門性や経験、そして企業への関与度合いによって差が生じることがあります。
税理士によるサービスの違いを生む要素
- 知識・経験・専門分野: 最新税法や判例への精通度、特定の業種や企業規模(例:粗利1億~10億円規模)への対応経験、得意とする分野(例:事業承継、国際税務、組織再編など)の違い。
- 情報収集力・提案力: 企業の状況を分析し、積極的に節税策や優遇税制を「提案」する姿勢があるか。受け身ではなく、プロアクティブな関与があるか。
- リスク管理とのバランス: 税務調査のリスクを考慮し、コンプライアンスを遵守した上で、最適な節税策を提案できるバランス感覚があるか。
- コミュニケーション: 専門的な内容を分かりやすく説明し、経営者の意向を汲み取り、相談しやすい関係性を築けるか。
もし、現在の税務顧問サービスに対して、「提案が少ない」「質問への回答が遅い・曖昧」「会社の将来について深く関与してくれない」といった印象を持つことがある場合、それは税理士のサービススタイルや得意分野とのミスマッチが生じている可能性も考えられます。
税理士は「コスト」ではなく、未来への「投資」
顧問税理士は、単に税務申告を代行するだけの存在ではありません。税務・会計の専門家として、企業の税負担を最適化し、経営リスクを管理し、時には経営戦略に関するアドバイスも行う、重要なパートナーでもあります。
顧問料という「コスト」だけでなく、その税理士が提供してくれる専門性、提案力、安心感といった「価値」に着目し、自社の成長にとって最適な提案をしてもらう視点が重要です。適切な税理士との連携は、顧問料以上のリターンを企業にもたらす「投資」と言えるでしょう。
まとめ:最適な税務パートナー選びが、会社の未来を左右する
法人税・消費税・所得税の負担を最適化することは、企業のキャッシュフロー改善、ひいては持続的な成長に不可欠な要素です。しかし、そのためには多角的な視点と高度な専門知識が求められます。
特に、粗利1億~10億円という成長ステージにある企業にとって、税務戦略は経営戦略と密接に結びついています。現状の税務対策が最適であるか、定期的に見直す機会を持つことは非常に重要です。
会社の成長段階を深く理解し、最新の税制に精通し、都度、最適な提案を行い、経営者のビジョンに寄り添ってくれる。税理士事務所との、そうしたお付き合いを模索していくことが貴社の未来をより明るく照らす力となるはずです。
税理士法人エールでは、粗利1億〜10億円規模の成長企業様の税務・経営に関する課題解決を数多くサポートしております。税務相談やセカンドオピニオンが必要な際は、ぜひお声がけください。