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税務調査の「立ち会い」、事前に確認しておきたいポイントとは?

はじめに:税務調査の連絡、まず何をすべきか? 立ち会う税理士との事前確認の重要性

税務署から「税務調査を行いたい」という連絡。多くの経営者の方にとって、この一報は大きな不安やストレスを引き起こすものでしょう。「何か問題があったのだろうか」「多額の追徴課税をされるのではないか」といった心配が頭をよぎるかもしれません。

まず大切なのは、慌てずに落ち着いて状況を把握することです。そして、次に重要になるのが、調査に立ち会う顧問税理士との連携です。税務調査は、専門家である税理士が立ち会い、経営者をサポートするのが一般的ですが、その税理士の経験、準備、そして当日の対応方針が、調査の進行や結果に影響を与える可能性があります。

調査官からの質問にどう答えるか、指摘事項に対してどう対応するか、どのような資料を準備しておくか――。これらを調査当日を迎える前に、顧問税理士としっかりと話し合い、認識を共有しておくことが、不安を軽減し、不必要な誤解や不利益を避けるために非常に重要となります。

この記事では、税務調査の立ち会いに際して、経営者が事前に顧問税理士に確認しておきたい具体的なポイントを、順を追って解説していきます。

確認ポイント①:税理士の「税務調査経験」と「実績」について

税務調査の対応は、教科書的な知識だけでは不十分であり、実際の現場での経験がものを言います。立ち会う税理士がどの程度の経験を持っているかを確認することは、安心して調査を任せられるかどうかの重要な判断材料となります。

  • 立ち会い経験の量と質: これまでにどのくらいの税務調査に立ち会ってきたのか、可能な範囲で尋ねてみることは有効です。単なる件数だけでなく、どのような業種、どの程度の規模の会社の調査経験が豊富なのかも確認できると良いでしょう。自社と類似したケースの経験があれば、より的確な対応が期待できます。
  • 過去の対応実績: 過去の税務調査において、税務署側とどのようなやり取りを行い、どのような結果(指摘事項の内容、修正申告の有無、追徴税額など)に至ったケースが多いのか、守秘義務に配慮しつつ、対応方針や考え方について確認します。特に、税務署の指摘に対してどのように交渉し、会社の正当性を主張したかといった経験は重要です 。  
  • 事務所としての体制: 税理士個人の経験に加え、事務所全体として税務調査に関するノウハウの蓄積やサポート体制があるかどうかも確認したい点です。例えば、国税庁や税務署出身の税理士が在籍している場合、税務署側の視点を踏まえた、より戦略的な対応が期待できるかもしれません 。  

これらの経験や実績は、税理士の調査対応能力を推し量る上での参考情報となります。

確認ポイント②:調査に向けた「事前準備」の進め方

税務調査は「準備が8割」と言われることもあります。どのような準備を、どのように進めるのかを事前に確認し、税理士と協力して万全の体制を整えることが重要です。

  • 準備のスケジュールと内容: 税務調査の連絡を受けてから調査当日まで、どのようなスケジュール感で、具体的にどのような準備を行うのかを確認します。
  • 論点の洗い出しと対策: 過去の申告内容を税理士と共に再確認し、税務調査で指摘される可能性のある事項(想定される論点)を事前に洗い出す作業を行うかを確認します。そして、それらの論点に対して、どのような説明準備や資料の整理を行うのかを共有します。
  • 事前打ち合わせの実施: 調査当日を想定した事前打ち合わせを行うか、行う場合はその内容(当日の役割分担、想定される質問への回答方針、準備資料の最終確認など)を確認します。
  • 書面添付制度の活用: 税理士が税務申告書に「申告内容が適正である」旨の書面を添付する「書面添付制度」を活用しているか確認します。この制度が適用されている場合、税務調査自体が省略されたり、調査期間が短縮されたりする可能性があります 。  
  • 調査官情報の考慮: 可能であれば、担当する調査官の所属部署や役職などの情報を基に、調査の重点項目や傾向を予測し、対策に活かす視点があるかも確認できるとよいでしょう 。  

十分な事前準備は、当日の冷静な対応につながり、調査をスムーズに進めるための基盤となります。

確認ポイント③:調査当日の「立ち会い方針」と「対応スタンス」

調査当日は、限られた時間の中で調査官とのやり取りが行われます。税理士がどのような方針で立ち会い、調査官に対応するのか、事前に認識を合わせておくことで、当日の混乱を防ぎ、一貫した対応を取ることができます。

  • 対応の主体: 調査当日は、基本的に税理士が主体となって調査官の質問に答える方針かを確認します。税務代理権限を持つ税理士が前面に立つことで、経営者は必ずしもすべての質問に直接答える必要はなく、必要な場面でのみ同席するという対応も可能です 。経営者が不慣れな質問に即答し、不利な回答をしてしまうリスクを避ける意味でも、税理士中心の対応は有効な場合があります。  
  • 質問への回答方針: 調査官からの質問に対して、どのように回答するかの基本的なスタンスを確認します。事実確認に関する質問か、見解を問う質問かを見極め、即答すべきか、一旦持ち帰り確認してから回答すべきかの判断基準などを共有しておきます。安易な回答は避け、慎重に対応する方針が望ましいでしょう。
  • 調査官とのコミュニケーション: 調査官に対してどのような態度で接するかを確認します。高圧的な態度を取る必要はありませんが、指摘に対しては冷静に、かつ論理的に、会社の正当性を主張する毅然とした姿勢で臨む方針であるかを確認します 。  
  • 状況に応じた対応: 調査が長時間に及ぶ場合の休憩のタイミングや、答えに窮する質問が出た場合に「確認して後日回答します」と伝えるなど、柔軟な対応方針を持っているかを確認します。

経営者と税理士が同じ方向を向いて調査に臨むために、当日の対応方針のすり合わせは欠かせません。

確認ポイント④:調査後の「交渉方針」と「着地点」の考え方

税務調査の結果、税務署から何らかの指摘事項(非違事項)が示される可能性は常にあります。その場合に、税理士がどのような方針で交渉に臨むのかを確認しておくことは、最終的な納税額やペナルティの有無に影響するため非常に重要です。

  • 指摘事項への対応: 税務署から指摘がなされた場合、その内容を鵜呑みにせず、まずは指摘の根拠となる事実関係と税法上の解釈を詳細に確認する方針かを確認します。納得できない点については、安易に同意しない姿勢が重要です 。  
  • 交渉スタンス: 指摘事項に対して、会社の主張や見解を論理的に伝え、税務署側と交渉(折衝)を行う用意があるかを確認します。税法解釈にはグレーゾーンも存在するため、交渉によって見解の相違を埋められる可能性もあります 。  
  • 修正申告への判断: 修正申告に応じるかどうかの判断基準を確認します。指摘事項が事実であり、法的に反論の余地がないと判断される場合には修正申告もやむを得ませんが、安易な妥協は避けるべきです。
  • ペナルティ(加算税・延滞税)への対応: 特に、仮装・隠蔽があったと認定された場合に課される重加算税は、税率が高く(35~40% )、その後の調査対象となりやすくなるリスクもあります。重加算税の適用回避に向けた交渉を積極的に行う方針かを確認します。  
  • 交渉経験: 過去の税務調査において、税務署とどのように交渉し、どのような結果(修正内容、追徴税額など)に導いた経験があるか、可能な範囲で確認することも参考になります。

税務調査は、指摘を受けて終わりではありません。その後の交渉プロセスが非常に重要であり、税理士の交渉力が問われる場面です。

経営者自身が調査に臨む上で心得るべきこと

税務調査の主役はあくまで会社(経営者)であり、税理士はそのサポート役です。税理士に任せきりにするのではなく、経営者自身も以下の点を心得ることで、より良い結果につながる可能性が高まります。

  • 調査への理解: 税理士から調査の目的、流れ、想定される論点などについて説明を受け、概要を理解しておくことが望ましいです。これにより、調査の状況を客観的に把握しやすくなります。
  • 事実関係の正確な情報提供: 調査官からの質問や、税理士からの確認に対して、事実関係については記憶に基づき正確に伝えましょう。不明確な点や曖昧な記憶に基づいて回答することは避けるべきです。
  • 税理士との緊密な連携: 調査前、調査中、調査後を通じて、顧問税理士と密にコミュニケーションを取り、情報を共有し、認識のずれがないように努めることが重要です。
  • 疑問・不安の表明: 税理士の対応方針や説明内容について、少しでも疑問や不安を感じたら、遠慮なく質問し、納得できるまで説明を求めましょう。信頼関係に基づいたオープンなコミュニケーションが不可欠です。

まとめ:事前の確認と連携が、税務調査の結果を左右する

税務調査は、多くの経営者にとって避けたい出来事かもしれませんが、日本の申告納税制度においては、どの企業にも起こりうるプロセスです。重要なのは、その連絡を受けた際に、慌てず、適切に準備し、冷静に対応することです。

そして、その対応の質は、立ち会う税理士の経験、知識、準備、交渉力によって大きく左右される可能性があります。調査の連絡を受けたら、まずは今回解説したようなポイントについて、顧問税理士と時間を取って話し合い、認識を共有しておくことが、不要な不安を軽減し、自社の正当な権利を守り、不利益な結果を回避するために極めて重要です。

経営者と税理士が互いを信頼し、強固な連携体制を築いて税務調査に臨むこと。それが、この困難なプロセスを乗り切るための最も確かな方法と言えるでしょう。

税理士法人エールでは、豊富な税務調査立ち会い経験に基づき、事前の準備から当日の立ち会い、調査後の交渉まで、お客様の状況に合わせたきめ細やかなサポートを提供しております。

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