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税務調査に備える。経験豊富な税理士・専門家の見極め方

はじめに:税務調査は突然やってくる。だからこそ「備え」と「専門家選び」が重要

「税務調査」―この言葉を聞いて、心穏やかでいられる経営者の方は少ないかもしれません。会社の規模や業績に関わらず、税務調査はどの企業にも実施される可能性があり、多くの場合、その連絡は予告なく、突然やってきます。経営者にとっては、日々の事業運営に加えて大きな精神的負担となりうる出来事です。

税務調査への対応は、単に調査官の質問に答えるというだけではありません。調査の過程や結果は、追徴税額の有無やその金額、場合によっては加算税などのペナルティにも直結するため、適切な準備と慎重な対応が極めて重要になります。この重要な局面において、会社の代理人として調査官と対峙し、経営者をサポートするのが顧問税理士をはじめとする専門家の役割です。

しかしながら、留意すべき点として、税理士によって税務調査に対する経験値、知識の深さ、対応方針には違いが見られることがあります。全ての税理士が税務調査対応を最も得意としているわけではない、という現実も認識しておく必要があるでしょう。そのため、日頃から税務調査の可能性を念頭に置き、適正な経理処理と申告を心がける「備え」を持つとともに、いざという時に自社の権利を適切に守り、不利益を最小限に抑えるために頼りになる「経験豊富な専門家」をどのように見極めるか、という視点を持つことが、現代の経営者には求められています。

顧問税理士との長期的な信頼関係は大切ですが、税務調査という特殊な状況においては、その専門家の調査対応能力を客観的に評価し、必要であればセカンドオピニオンを求めるなどの行動も視野に入れるべきかもしれません。

この記事では、中小企業の経営者の皆様が税務調査に適切に備えるために、どのような経験や能力を持つ税理士・専門家が求められるのか、そして、顧問税理士を選定する際や、現在の顧問税理士の対応力を評価する際に、どのような点に着目して「見極める」べきか、その具体的なポイントを詳しく解説していきます。

税務調査における「経験豊富な専門家」の重要性

税務調査の現場では、教科書通りの知識だけでは対応しきれない、複雑で微妙な判断が求められる場面が数多く存在します。法律や通達の解釈、事実認定、そして調査官との交渉など、その対応には高度な専門性と、何よりも実際の「経験」が不可欠です。

「経験豊富」とは、単に税理士としての業務年数が長いということだけを意味するわけではありません。税務調査に関して言えば、以下のような要素が重要になります。

  • 立ち会い件数と多様な事例への対応経験: これまでにどれだけの税務調査に立ち会ってきたか、その件数は経験の指標の一つとなります。さらに重要なのは、様々な業種、企業規模、そして多様な指摘事項(売上計上漏れ、経費の否認、消費税の論点、特殊な取引など)に対応してきた経験です。多くの引き出しを持っている専門家ほど、予期せぬ状況にも冷静かつ的確に対応できる可能性が高まります 。  
  • 調査官との交渉経験と着地点を探る能力: 税務調査は、単なる事実確認の場ではなく、税務署側との「交渉」の場でもあります。調査官の指摘に対して、法律や事実に基づいて適切に反論し、会社の主張を論理的に伝え、双方にとって受け入れ可能な現実的な着地点(修正内容や税額)を探る交渉力は、豊富な実戦経験によって培われます。
  • 税法解釈と実務慣行・指摘傾向への深い理解: 条文の知識だけでなく、それが実際の税務調査の現場でどのように解釈・運用されているか(実務慣行)、どのような点が指摘されやすいか(最新の指摘傾向)を熟知していることが重要です。これにより、調査のポイントを予測し、先回りした準備や対応が可能になります。

税務調査は、会社の財務状況や経営の根幹に関わる重要なプロセスです。その対応を依頼する専門家が、これらの経験や能力を十分に有しているかどうかは、調査の結果に大きな影響を与えうる要素と言えるでしょう。

見極めポイント①:税務調査への「基本姿勢」と「専門知識」

専門家を見極める第一歩は、その税理士が税務調査に対してどのような「姿勢」で臨み、その基盤となる「専門知識」を常にアップデートしているかを確認することです。

  • 調査への積極性 vs 受け身の姿勢: 税務調査に対して、積極的に関与し、会社の正当な権利や利益を守るために主体的に行動する姿勢があるか、それとも税務署の指摘をそのまま受け入れがちな受け身の姿勢かは大きな違いです。もちろん、法令遵守は絶対ですが、守るべき主張は臆せず行うという気概があるかを確認したいところです 。  
  • 知識の継続的な更新: 税法や関連する通達、判例は毎年のように改正・変更されます。最新の情報を常に学習し、知識をアップデートし続ける意欲と習慣があるかは、専門家としての信頼性を測る上で非常に重要です。セミナーへの登壇経験や情報発信の状況なども、その一端を示す指標となる場合があります 。  
  • 重点分野・リスクの把握: 税務調査において、特定の業種や取引に関して指摘されやすいポイントが存在します。顧問先の業種特性や事業内容を深く理解し、潜在的な税務リスクを事前に把握し、注意喚起や対策の提案を行える知識と洞察力があるかを確認します。
  • リスクと主張のバランス感覚: 税務調査のリスクを過度に恐れるあまり、本来認められるべき経費や処理まで否定してしまうような対応は望ましくありません。一方で、明らかに無理な主張やリスクの高い節税策を安易に勧めるのも問題です。コンプライアンスを遵守しつつ、会社の権利を最大限主張するという、バランスの取れた判断ができる専門家かどうかが重要です。

これらの姿勢や知識レベルは、日頃のコミュニケーションや、具体的な相談への回答などから推し量ることができます。

見極めポイント②:「事前準備」の質と徹底度

税務調査を乗り切るためには、調査当日だけでなく、それまでの「事前準備」が極めて重要です。経験豊富な専門家は、この事前準備に力を入れ、万全の体制で調査に臨もうとします。その準備の質と徹底度を見極めることが大切です。

  • 調査連絡後の対応と計画性: 税務署から調査の事前通知があった場合、どれだけ迅速に対応を開始し、調査当日までにどのような準備を、どのようなスケジュールで行うのか、具体的な計画を提示してくれるかを確認します。場当たり的な対応ではなく、計画に基づいた準備を進める姿勢が重要です。
  • 過去の申告内容のレビューとリスク分析: 税務調査の対象となる過去数年分の申告書や元帳、証憑類を改めて精査し、誤りや計上漏れ、税務上の解釈が分かれる可能性のある取引など、指摘を受ける可能性のあるリスク項目を事前に洗い出す作業を行うかを確認します。これにより、想定される質問への準備や、必要に応じた修正申告の検討が可能になります。
  • 想定問答・シミュレーションの実施: 洗い出したリスク項目や、一般的に調査で質問されやすい事項について、事前に経営者や経理担当者と打ち合わせを行い、回答内容の準備や、場合によっては模擬的な質疑応答(シミュレーション)を行うかを確認します。これにより、当日の冷静な対応が可能になります。
  • 書面添付制度の活用とその理解: 税理士法に定められた「書面添付制度」は、税理士が申告書の作成に関して、計算・整理・相談に応じた事項を記載した書面を添付する制度です。この書面が添付されている場合、税務署は調査に先立って税理士に意見聴取を行う必要があり、その結果、実地調査が省略されるケースも少なくありません 。この制度を積極的に活用し、その意義や効果を経営者にきちんと説明できるかも、税理士の調査への取り組み姿勢を示すポイントです。  
  • 調査官情報の考慮: 税務調査を担当する調査官の所属部署(法人課税部門、資料調査課など)や役職によって、調査の専門性や視点、厳しさが異なる場合があります 。可能であれば、そうした情報も考慮に入れ、対策を調整する視点があるかも確認できると、より安心感が増すでしょう。  

事前準備をどれだけ丁寧に行うかは、税理士の経験とプロ意識の表れと言えます。

見極めポイント③:「コミュニケーション」と「説明能力」

税務調査は、経営者にとっても税理士にとっても、精神的な負担が大きいプロセスです。その中で、両者が円滑に意思疎通を図り、認識を共有しながら進めていくためには、税理士のコミュニケーション能力と説明能力が非常に重要になります。

  • 分かりやすい説明: 税法や会計、調査手続きに関する専門用語は、経営者にとっては難解な場合が多くあります。専門的な内容を、専門用語を使いすぎず、具体的な例えなども交えながら、経営者が納得できるよう分かりやすく説明する能力があるかを確認します。一方的な説明ではなく、理解度を確認しながら話を進める姿勢も大切です。
  • 傾聴姿勢: 経営者が抱える税務調査への不安や疑問、あるいは日頃の経営上の悩みなどに対しても、真摯に耳を傾け、共感する姿勢があるか。信頼関係の基盤となる部分です。
  • 報告・連絡・相談の適時性と的確性: 事前準備の進捗状況、調査当日の状況、調査官からの指摘事項の内容、今後の対応方針などについて、経営者に対して適時かつ的確に報告・連絡・相談を行うか。情報共有が不足すると、経営者は不安を募らせ、税理士との間に認識のずれが生じる可能性があります。
  • 連携意識: 税務調査は、税理士だけ、あるいは経営者だけで乗り切れるものではありません。経営者と税理士がそれぞれの役割を理解し、情報を共有し、一体となって調査に臨むという「連携意識」を持っているか。経営者を置き去りにせず、二人三脚で進めていくという姿勢が見られるかは重要なポイントです。

調査という非日常的な状況下だからこそ、普段以上に丁寧で分かりやすいコミュニケーションが求められます。

見極めポイント④:「交渉力」と「着地点を探る力」

税務調査の最終段階では、調査官から指摘事項が提示され、修正申告を求められることがあります。この場面で、会社の正当な権利を守り、不利益を最小限に抑えるためには、税理士の「交渉力」と、現実的な「着地点を探る力」が不可欠となります。

  • 指摘への精査と反論: 調査官からの指摘に対して、すぐに同意するのではなく、まずその指摘の根拠となる事実関係は正しいか、適用されている税法の解釈は妥当か、などを詳細に確認・検討する姿勢があるかを確認します。その上で、事実誤認や法解釈の相違があれば、客観的な証拠や関連する判例などを示し、論理的に反論・主張できる能力が求められます 。  
  • 主張すべき点の明確化と論理展開: 交渉においては、感情的にならず、会社の主張すべき点を明確にし、それを裏付ける証拠や法令解釈を整理して、調査官に分かりやすく、かつ説得力を持って伝える能力が必要です。
  • ペナルティ回避への取り組み: 修正申告が必要となった場合でも、それが意図的な不正(仮装・隠蔽)によるものではなく、解釈の相違や単純なミスであることを主張し、重加算税などの重いペナルティが課されないように交渉する意欲と能力があるかを確認します 。重加算税の有無は、将来の税務調査の頻度にも影響を与える可能性があります。  
  • 現実的な着地点の見極め: 交渉においては、常に自社の主張が100%認められるとは限りません。時には、双方にとって受け入れ可能な現実的な落としどころ(修正内容や税額)を見極め、交渉をまとめていく能力も必要となります。過去の調査経験や判例知識などが、この見極め力に繋がります。

税務調査の最終局面における税理士の交渉力は、最終的な納税額に直接影響を与える重要な要素です。

経験豊富な専門家を見極めるための具体的なアクション

では、実際にどのようにして、税務調査に強く、経験豊富な税理士・専門家を見極めればよいのでしょうか。以下に具体的なアクションの例を挙げます。

  • 初回相談や面談での具体的な質問:
    • 新規に税理士を探す場合や、セカンドオピニオンを求める際には、初回の相談や面談の機会を活用しましょう。
    • 税務調査の立ち会い経験(件数、業種、規模など)、得意な分野、事前準備の進め方、調査当日の対応方針、過去の交渉事例(守秘義務に触れない範囲で)など、具体的な質問を投げかけてみましょう。  
    • 回答の内容だけでなく、その際の受け答えの姿勢、説明の分かりやすさ、親身になってくれるかなども、判断材料となります。
  • 他の経営者からの評判・紹介の活用:
    • 最も信頼できる情報源の一つが、実際にその税理士に依頼している、あるいは過去に依頼したことのある経営者の声です。  
    • 信頼できる経営者仲間や、所属する業界団体のメンバーなどに、「税務調査に強い税理士を知らないか」「今の顧問税理士の調査対応はどうだったか」など、直接尋ねてみるのは有効な方法です。
  • 情報発信内容の確認:
    • 税理士事務所のウェブサイトやブログ、代表者や所属税理士が執筆した書籍、開催しているセミナー情報などを確認することも、その専門性や税務調査への取り組み姿勢を推し量るヒントになります。  
    • 税務調査に関する具体的な情報発信が豊富であれば、その分野に力を入れている可能性が高いと考えられます。
  • セカンドオピニオンの積極的な活用:
    • 現在の顧問税理士との関係は維持しながら、税務調査への対応や特定の税務判断について、別の税理士に意見を求める「セカンドオピニオン」を利用することも有効です。  
    • 異なる専門家の意見を聞くことで、現在の状況を客観的に評価でき、より納得のいく判断が可能になります。特に、税務調査の連絡を受けた後や、現在の顧問税理士の対応に不安を感じる場合には、検討する価値があります。

これらのアクションを通じて得られた情報を総合的に判断し、自社にとって最も信頼でき、安心して任せられる専門家を見つけることが重要です。

まとめ:備えあれば憂いなし。信頼できる専門家と共に税務調査を乗り切る

税務調査は、どの企業にとっても起こりうる出来事であり、経営者にとっては大きな負担となり得ます。しかし、日頃から適正な会計処理と税務申告を心がけ、いざという時のために適切な「備え」をしておくことで、その不安は大きく軽減されます。

そして、その「備え」の最も重要な要素の一つが、信頼できる経験豊富な税理士・専門家との連携です。税務調査のプロセス全体を通じて、専門的な知識、豊富な経験、そして会社の立場に立った交渉力を持つ専門家が側にいることは、何よりも心強い支えとなります。

今回ご紹介した「見極め方」のポイントを参考に、現在の顧問税理士との関係性を見つめ直したり、新たな専門家を探したりする際に、ぜひ役立ててください。自社の状況を深く理解し、共に課題に立ち向かい、最適な解決策を導き出してくれる専門家を見つけることが、税務調査という困難を乗り切るための鍵となります。

信頼できる専門家との強固な連携は、単に税務調査への対策となるだけでなく、日々の経営における意思決定をサポートし、会社の健全な成長と発展を長期的に支える力となるでしょう。

税理士法人エールでは、多数の税務調査立ち会い経験を有する専門家が、事前準備から交渉まで、お客様の実情に即したきめ細やかなサポートを提供しております。税務調査に関するご不安や、専門家の選定についてお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。


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