「時価」と「譲渡価額」の関係
税務上「時価」とは、不特定多数の第三者間で成立する取引価格を指します。関連法人間やグループ法人間では、特別な動機や親子関係も影響し、実際に支払われた譲渡価額が妥当であっても、「時価から著しく低い」と判断されれば税務上問題視されます。特に、時価の2分の1未満で譲渡された場合には、「みなし譲渡」として時価をベースに課税されるルールがあります(所得税法59条、施行令169条)。
不動産業界で発生しやすい低額譲渡のケースと背景
不動産業界では、同一グループ内の資産再配置や、清算物件の移管、債務整理目的などで価格が市場価格よりも低く設定されることが多くあります。たとえば、関連会社が保有する土地を資金繰り改善のために別法人へ譲渡する際、意図的に低価格にしてしまうことで、税務リスクが生じます。
税務上の課税関係と「著しく低い価額」の判定基準
所得税法59条・施行令169条の解釈
個人から法人へ譲渡された不動産で、時価の半額未満であれば、売主側には「みなし譲渡所得」が課され、収入金額は実際の譲渡価額ではなく時価になります。代表的な事例として、同族会社の代表者が時価1億円の土地を4,000万円で法人に売却した場合、譲渡所得の収入金額は1億円とされます。
「法人→法人」取引への法人税法22条適用
法人間取引では、譲受側は実際の支払額ではなく時価との差額を受贈益として益金に計上し、法人税が課されます。差額分を寄付金扱いにできるかは限度額が厳しく、課税負担を免れません。
税務調査で指摘される典型ケースと実務リスク
仲間法人・グループ法人間の譲渡事例
関連会社間で意図的に低価格譲渡が行われると、税務署は「内部利益操作」や「資産移転の背景」を重視するため、資料不備があると厳しく指摘されます。第三者との交渉や査定根拠の不在は特に指摘対象になりやすいです。
国税不服審判所の裁決事例からの教訓
合理的な評価プロセス(例:複数の査定書、鑑定結果の比較)が不十分だと、時価判定が否認されるケースがあります。税理士による事前評価や第三者評価証明書がないと、調査で不利になります。
国税庁タックスアンサー No.3217 などでの取り扱い
タックスアンサーでは、個人→法人譲渡において時価の半額未満の場合、時価による課税が行われる旨を明示しています。
不動産業界向けの評価方法と実務対応策
路線価・固定資産税評価額から時価推定する方法
評価証明書や税務上の固定資産税評価額に1.2〜1.5倍を補正して時価を推定する手法が一般的です。複数の不動産業者の査定書と合わせて保存することで、税務調査時に妥当な合理性を主張できます。
実務証明としての鑑定書や第三者評価の重要性
不動産鑑定士による正式な鑑定書や、評価会社による査定報告書を取得することで、時価評価の裏付けとなり、低額譲渡に対する課税回避を実務的に支援可能です。また、資料を保存しておくことで、調査時のリスクを低減できます。
エール名北会計による調査対応・スキーム提案事例
国税OBの知見を活かした調査対応フロー
調査通知があった段階から、以下のようなステップで対応します:
- 取引当事者・目的・対価決定プロセスの調査
- 査定書・鑑定書・評価根拠の整理・提出
- 場合によっては事前相談(税務署)や更正、不服対応支援
関係法人間での税務リスクを最小化するスキーム
グループ内での不動産移転を検討する際、単に低額売買するのではなく、合同会社設立や合併を活用して評価損の調整や資産再構成を行う方法などを提案し、税務上の調整幅を最大化します。
よくある誤認・注意点まとめ
「相続税評価額=時価」の誤認リスクと半額ルールの適用誤り
相続税評価額や固定資産税評価額と時価は異なります。これらをそのまま「時価」と誤認し、安易に譲渡価額を設定してしまうと、時価の半額未満の低額譲渡と判断されるリスクがあります。
税務調査対応で意識すべき書類・プロセス
- 査定・鑑定書のコピー保存
- 取引目的の社内文書(議事録・承認記録)
- 契約書・送金明細など資金実態の証明書
- 価格決定プロセスの説明資料
まとめ:今すぐできる対応アクション
- 低額譲渡を検討する前に、必ず第三者鑑定や査定書を取得して適正価格を確認
- グループ内移転では、取引目的や価格決定のプロセスを文書化
- 税務調査通知が来たら、国税OBの知見がある専門家を介して対応するのが安心です
ご相談のご案内
不動産業界の法人間譲渡について、税務調査や税務リスクがご心配な場合は、ぜひ税理士法人エール名北会計までご相談ください。当社では、国税OB・公認会計士・不動産鑑定士の連携体制により、実務的かつ信頼性の高い支援を提供しております。
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