「おかげさまで、うちの会社もようやく利益が安定してきたんだ。でも、税金の額を見て正直びっくりしてね…。何か、もっと賢い節税の方法はないものかな?」
中小企業の経営者の皆様とお話していると、このようなご相談をいただくことが本当に多くなりました。長年の努力が実を結び、ようやく利益が出始めた。それは喜ばしいことですが、同時に、これまで以上に税金というものが身近に、そして重く感じられるようになる時期でもあります。
「節税」と聞くと、どうしても裏技的な方法や、グレーゾーンを攻めるようなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そうした短期的なテクニックに走ることは、長期的な視点で見ると、かえって税務リスクを高め、企業の健全な成長を妨げる可能性すらあります。
本記事では、利益が出始めた中小企業の経営者の皆様に向けて、射倖心を煽るような情報ではなく、長期的な視点を持って、地に足の着いた、つまり現実的で無理のない節税の考え方と具体的なアプローチを解説していきます。
なぜ今、「地に足の着いた」節税が重要なのか
利益が出始めた今こそ、将来を見据えた「地に足の着いた」節税に取り組むべき重要なタイミングです。その理由は大きく分けて3つあります。
第一に、利益を「守り」、未来への投資に繋げることができるからです。税金は、会社の利益から支払われるものです。適切な節税を行うことで、手元に残る資金を増やし、それを新たな事業展開や設備投資、人材育成といった企業の成長戦略に充てることができます。
第二に、企業の持続的な成長を支える土台となるからです。一時的な節税策やリスクの高い方法に頼るのではなく、法令を遵守し、企業の財務体質を強化するような堅実な節税を行うことで、長期的に安定した経営基盤を築くことができます。
第三に、税務リスクを回避し、健全な経営を行うためです。過度な節税や誤った解釈に基づく税務処理は、税務調査での指摘や追徴課税といった事態を招きかねません。地に足の着いた節税は、税務署からの信頼を得ることにも繋がり、健全な企業運営を支えます。
利益が出ている中小企業が持つべき節税の基本的な考え方
具体的な節税対策に入る前に、利益が出ている中小企業が共通して持つべき節税の基本的な考え方を4つご紹介します。
3.1. 利益の適切な管理と予測
「うちの会社、最近売上が伸びてきて、なんとなく利益も増えてる気がするんだけど…」
このような感覚的な把握だけでは、効果的な節税対策を講じることはできません。まずは、自社の利益を正確に把握し、将来的な利益を予測することが重要です。
- どんぶり勘定からの脱却: 月次決算をしっかりと行い、売上、原価、販管費などを正確に把握しましょう。会計ソフトの導入や経理担当者の育成も重要です。
- 定期的な財務状況の把握: 損益計算書や貸借対照表などの財務諸表を定期的に確認し、会社の現状を数字で理解しましょう。
- 将来の利益予測に基づいた計画的な節税: 今期の利益だけでなく、来期以降の利益予測も踏まえて、中長期的な視点で節税計画を立てることが大切です。
3.2. 経費の適正な計上と証拠書類の重要性
「これは経費になるのかな?ならないのかな?」
経費の計上は、利益を圧縮し、節税に繋がる基本的な要素です。しかし、税法上のルールを正しく理解し、適切な証拠書類を保管することが不可欠です。
- 経費として認められる範囲を正しく理解する: 事業に関連する支出であれば、原則として経費として認められますが、個人的な支出や明らかに過大な支出は認められません。税理士に相談しながら、判断に迷うものは確認するようにしましょう。
- 領収書や請求書などの証拠書類をきちんと保管する: 経費として計上した支出については、日付、金額、支払先、内容などが記載された証拠書類を適切に保管することが義務付けられています。
- 無駄な経費の削減も節税に繋がる: そもそも無駄な経費を削減することも、利益を増やし、結果的に納税額を抑えることに繋がります。
3.3. 税制優遇措置の積極的な活用(無理のない範囲で)
国や地方公共団体は、中小企業の成長を支援するために、様々な税制優遇措置を設けています。これらの制度を積極的に活用することも、賢い節税の重要な考え方の一つです。
- 中小企業向けの税制優遇制度を知る: 中小企業投資促進税制、研究開発税制、雇用促進税制など、様々な制度があります。自社の業種や事業内容に合った制度を探してみましょう。
- 自社の状況に合った制度を検討する: 制度の内容を理解した上で、自社の経営状況や今後の計画に合った制度を活用することが大切です。
- 制度の適用要件をしっかり確認する: 税制優遇措置を受けるためには、一定の要件を満たす必要があります。適用要件を事前にしっかりと確認し、準備を進めましょう。
3.4. 専門家(税理士)との継続的な連携
「税理士さんには、年に一度の確定申告の時しか連絡を取っていないな…」
税理士は、税務の専門家として、企業の節税を強力にサポートしてくれる存在です。単なる税務申告の代行者としてだけでなく、日頃から積極的に連携することで、より効果的な節税対策を講じることができます。
- 税理士を単なる税務申告の代行者と考えない: 税理士は、税務に関する幅広い知識と経験を持っています。経営に関する相談にも積極的に乗ってもらいましょう。
- 顧問税理士に積極的に相談し、アドバイスを受ける: 節税に関する疑問や不安があれば、遠慮せずに税理士に相談しましょう。最新の税制情報や、自社に合った具体的なアドバイスを受けることができます。
- 最新の税制情報を共有してもらう: 税法は頻繁に改正されます。税理士から定期的に最新の税制情報を共有してもらうことで、常に適切な対応を取ることができます。
具体的な節税対策の例 – 地に足の着いたアプローチ
それでは、上記の基本的な考え方を踏まえ、利益が出ている中小企業が具体的に検討すべき節税対策の例をいくつかご紹介します。
4.1. 役員報酬の計画的な設定
質問事例:「利益が安定してきたので、そろそろ役員報酬を上げようかと考えています。税金面で何か注意点はありますか?」
役員報酬は、会社の利益を個人の所得に移転する重要な手段の一つであり、損金として計上できるため、節税効果が期待できます。しかし、不相当に高額な役員報酬は、税務署から否認される可能性があります。
地に足の着いた対策:
- 業績や貢献度に見合った適正な役員報酬: 同業種・同規模の企業の役員報酬水準を参考に、会社の業績や個人の職務内容に見合った金額を、期首に決定し、毎月同額を支給することが原則です。
- 事前確定届出給与の活用: 定期同額給与以外に、特定の時期に一定額を支給する事前確定届出給与を活用することで、賞与としての支給よりも柔軟な役員報酬設計が可能になります。税務署への届出が必要となるため、税理士に相談しながら手続きを進めましょう。
- 役員退職金の検討(長期的な視点): 長年会社に貢献した役員に対して退職金を支給することで、個人の所得税負担を軽減することができます。役員退職金は、適切な金額であれば損金として認められます。将来を見据えて、計画的に準備を進めることが大切です。
4.2. 設備投資の検討と税制優遇の活用
質問事例:「新しい機械を導入して生産効率を上げたいのですが、税金面で何かメリットはありますか?」
積極的に設備投資を行うことは、生産性向上や事業拡大に繋がり、結果として利益増加に貢献します。税制面でも、設備投資を促進するための様々な優遇措置が用意されています。
地に足の着いた対策:
- 生産性向上に繋がる投資: 単なる節税目的ではなく、将来的な利益増加に繋がる投資を検討することが重要です。
- 中小企業投資促進税制などの活用: 一定の要件を満たす設備投資を行った場合、取得価額の30%の特別償却、または7%の税額控除のいずれかの適用を受けることができます。制度の適用要件や対象となる設備などを事前に確認しましょう。
- リース契約の検討(資金繰りとのバランス): 設備の購入だけでなく、リース契約を利用することで、初期投資を抑えながら、毎月のリース料を損金として計上することができます。資金繰りの状況に合わせて検討しましょう。
4.3. 研究開発費の適切な管理と税額控除の検討
質問事例:「うちのような中小企業でも、研究開発費って税金が安くなる制度があるんですか?」
新しい技術や製品の開発に取り組む中小企業を支援するため、研究開発費に対する税制優遇措置が設けられています。
地に足の着いた対策:
- 新技術・新製品開発への積極的な投資: 将来の競争力強化に繋がる研究開発に積極的に投資することで、税制上のメリットも享受できます。
- 研究開発費税制の適用要件の確認: 自社の研究開発活動が税制の対象となるかを確認し、要件を満たすように管理体制を整えることが重要です。具体的には、どのような費用が研究開発費として認められるのか、税理士に確認しましょう。
- 関係書類の整備: 研究開発費として認められるための証拠書類(実験記録、会議議事録、試作品の写真など)を適切に作成し、保管することが大切です。
4.4. 生命保険の活用(保障目的を重視しつつ)
質問事例:「経営者である私に万が一のことがあった場合、会社や家族を守るために生命保険を考えています。税金面で何か考慮すべき点はありますか?」
経営者の死亡保障は、事業承継や会社の存続において非常に重要です。生命保険の種類によっては、支払った保険料の一部を損金として計上できる場合があります。
地に足の着いた対策:
- 保障の目的を明確にする: 経営者の死亡保障、役員の退職金準備、事業承継対策など、保険の加入目的を明確にすることが重要です。
- 節税効果のある保険商品の検討(ただし、目的を明確に): 全額損金算入できるもの、一部損金算入できるもの、将来の解約返戻金に課税されるものなど、保険の種類によって税務上の取り扱いが異なります。保険の専門家や税理士に相談しながら、自社の状況と目的に合った商品を選ぶことが大切です。
- 安易な節税目的での加入は避ける: 保険本来の目的を忘れず、税制メリットだけに目を奪われないように注意が必要です。
4.5. 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用
質問事例:「取引先の経営状況が少し不安です。何かリスクに備える方法はありますか?税金も安くなると聞いたのですが…。」
中小企業倒産防止共済は、取引先の倒産によって自社が連鎖倒産するリスクを軽減するための制度です。掛金は損金として計上できるため、節税効果も期待できます。
地に足の着いた対策:
- 制度の概要と加入要件の確認: 共済の仕組みや加入資格、掛金などを事前にしっかりと確認しましょう。
- 取引先の状況を定期的に確認: リスクに備えるだけでなく、日頃から取引先の経営状況を把握しておくことが重要です。
- 解約時の税務上の取り扱いも理解しておく: 解約手当金は益金として課税されるため、加入時だけでなく解約時のことも考慮して検討しましょう。
4.6. その他、日常業務における経費管理の徹底
上記以外にも、日常業務における経費管理を徹底することで、積み重ねによる節税効果が期待できます。
- 出張旅費規程の整備: 出張に関する費用を明確に定め、規程に基づいて支給することで、適正な経費として認められます。
- 社用車の適切な管理: 社用車の使用目的を明確にし、私的な利用との区別を徹底することで、税務上のリスクを軽減できます。
- 通信費や水道光熱費の見直し: 無駄なコストを削減することも、利益を増やし、結果的に納税額を抑えることに繋がります。
自社に合った節税方法を見つけるためのステップ
「色々な節税対策があるのは分かったけど、うちの会社には何が合うんだろう?」
このように悩まれる経営者の方も多いでしょう。自社にとって最適な節税対策を見つけるためには、以下のステップで検討を進めることが大切です。
- ステップ1:現状分析と課題の明確化: まずは、自社の財務諸表を分析し、現状の利益状況や税負担の状況を正確に把握しましょう。そして、「なぜ節税したいのか?」「節税によって何を実現したいのか?」といった課題を明確にすることが第一歩です。
- ステップ2:専門家(税理士)への相談とアドバイスの活用: 自社の現状と課題を税理士に詳しく説明し、専門的なアドバイスを受けましょう。税理士は、最新の税制情報や豊富な経験に基づいて、最適な節税プランを提案してくれます。
- ステップ3:短期的な視点と長期的な視点のバランス: 目先の節税効果だけでなく、将来の事業展開や資金計画など、長期的な視点も踏まえて対策を検討することが重要です。
- ステップ4:定期的な見直しと改善: 税制は常に変化しています。また、自社の経営状況も変化していきます。そのため、一度行った節税対策も、定期的に見直し、必要に応じて改善していくことが大切です。
陥りやすい誤解と注意点
最後に、「地に足の着いた節税」を行う上で、中小企業の経営者の皆様が陥りやすい誤解と注意点をお伝えします。
- 節税は「悪」ではない: 節税は、法令の範囲内で適切に行う限り、決して悪いことではありません。むしろ、企業の健全な成長のために必要な取り組みです。
- 過度な節税によるリスク: 節税効果ばかりを追い求め、無理な対策を行うと、税務調査での指摘や資金繰りの悪化を招く可能性があります。
- 安易な情報に惑わされない: インターネットや書籍には様々な節税情報がありますが、中には誤った情報や古い情報も含まれています。信頼できる専門家のアドバイスを参考にしましょう。
- 税務調査への備え: 日常的な会計処理を正確に行い、証拠書類をきちんと保管しておくことが、税務調査への最も有効な備えとなります。
まとめ – 「地に足の着いた節税」で企業の未来を切り拓く
本記事では、利益が出ている中小企業の経営者の皆様に向けて、短期的なテクニックに走らず、長期的な視点を持って堅実に節税するための基本的な考え方と具体的なアプローチを解説しました。
「地に足の着いた節税」は、一朝一夕に効果が出るものではありません。しかし、日々の経営の中で、正しい知識を持ち、計画的に取り組むことで、必ずその成果は現れてきます。
もし、今回の記事を読んで、「うちの会社でも、もっとできることがあるかもしれない」「専門家である税理士に相談して、より具体的なアドバイスを受けたい」と感じられた方は、ぜひ一度、私たちにご連絡ください。私たちは、中小企業の皆様の成長を、税務の面からしっかりとサポートさせていただきます。